いつもお世話になっている某商社の営業さんより、こんなご相談をいただきました。 「あるアパレル店舗のメインディスプレイに、9体のマネキンがクルクルまわる装置をつくれませんか?」 とのこと。話をよく聞くと、超大手アパレルの店舗デザインで、有名なデザイナーが上記のようなものを作るよう、指示をしてきたという。
「そんなのすぐできますよ。」 と軽く返事をしたら、
「違うんですよ。9体のマネキンが、寸分違わず回るんです。実は他のメーカーにも作ってもらったんですが、1日中回ってると、少しずつずれてきて、夕方には、9体がバラバラの方向を向いてしまう…ということになるんです。今作ってもらっているメーカーが言うには、超高性能なセンサーとモーターを使えば、ぴったり合わせることは出来るけれど、金額がびっくりするくらい高くなるんですよね…。今後、他の店舗にも設置していきたいから、確実に予算内で作って欲しいんです。」
…なるほど。そういうことか…。確かにむずかしい…と、思いつつも、今までの経験からなんとなく出来るような気がしていました。
「少し考えさせてください」と返事をして、しばらく考えることにしました。
アイデアは突然に!
なんとなーく出来るような気はしていたものの、具体的にどうしたらいいのか全く思いつかず、回るモーターを見つめて数日が経ちました。
安いモーターは、回るスピードに微妙に個体差があるんです。この微妙な差をどうして埋めればいいのやら…
本当に微妙なんです。1回転するスピードにしたら、0.01秒とかの差なんだけれども、1日中回ると各マネキンの向く角度がちょっとずつズレてくる。本当にちょっとなんだけどな…
1日回ってるからズレが大きくなる…数回なら絶対気付かない…ましてや1回転なら、同じといってもいいくらいなのに……
1回転なら同じ…そうだ!! 1回転するごとに、一瞬止めればいいんだ!0.01秒止まったって、誰も気付かない。
1回転するごとに、全てのマネキンを正面で止めて、再度同時に回り始めればいい。 そうすると、今の安いモーターでも可能じゃないか!!
それに気付いてから、すぐに試作に取りかかりました。思った通り!マネキンの回転がズレることはなく、一瞬止まっているのも全く気付かない。実際、試作してみると、1回転ごとではなく、数回に1回止めるくらいで充分だとわかり、すぐに某商社の営業さんに連絡しました。
もちろん、このアイデアは採用され、ディスプレイの製作、設置もご依頼いただきました。 全国や海外の店舗にも納入されることになり、社員一同、楽しく海外出張させていただきました♪
きっとみなさんもどこかで「クルッとマネキン」を見ているかもしれませんね。